刑事弁護について

最近、刑事事件の弁護人をしておいて思うことは、取調べ(警察署や検察庁に呼び出され、事情を聴かれ、聴取の内容を書面化し、その書面に署名押印すること)の内容がブラックボックスということです。

任意捜査(逮捕されていない場合)は、取調べ受忍義務(取調べに応じる義務のこと)がありませんので、いつでも退席できますし、帰ることもできます。

また、接見交通権がありますので、いつでも、弁護人に意見を求めることができます(取調べを中断し、弁護人に電話するなど)。

これを警察官が妨害しようとした場合、接見交通権の侵害となる可能性があります。

 

さらに、ブラックボックスであることをいいことに、警察官による高圧的な取調べがまかり通っているようにも思います。

取調べに関しては、密室で行われ、かつ警察署という国の施設で行われるものですので、取調べをされる側や弁護人にはなんの証拠も残りません。

警察官が取調べの様子を記録していることもなく(取調べの可視化対応事件を除く)、第三者から取調べの評価をすることは困難を極めます。

そこで、当事務所がおすすめする方法は、取調べの際、小型のビデオカメラやICレコーダーを持ち込み、取調べの様子を録画することです。

これにより、第三者が客観的に取調べの様子を評価できることになります。

取調べの様子の録画は、警察官による取調べ方を明らかにするだけではなく、どのようなことを聞かれたのか、捜査機関がどのような証拠を持っているのかなど、多くの情報が含まれており、弁護人の活動を大いに手助けしてくれるものです。

 

万が一、取調べの際、警察官から所持品検査をされそうになった場合、拒否できますので、明確に拒否してください。

取調べを録音することは適法ですので、ICレコーダーの提出を求められても応じる必要もありません。

 

警察官に呼び出された際には、ICレコーダーを持参してもらい、取調べを録音してもらえたらと思います。

公安委員会からの呼び出しについて

賀川法律事務所の弁護士加藤高明です。

最近、公安委員会から呼び出し通知が来た、どうすればよいのか、といった相談が増えています。(法的には意見の聴取といいます。)

まず、どのような理由で呼び出されたのかを確認してください。

例えば、安全運転義務違反、酒気帯び(25点)などという記載があると思います。

安全運転義務違反とは、事故などがあった場合に就けられるもので、酒気帯びは、中アルコール濃度が、1ミリリットル中0.3ミリグラム、又は呼気1リットル中0.15ミmg以上のアルコール量が検出された場合をいいます。

いずれも、公安委員会の前に、警察から呼び出しがなされているはずです。

警察からの呼び出しの際、何を聞かれるか、が大切です。

皆様に身に覚えのない場合、必ず、はっきりとやっていません!と言ってください。

それでも、警察は、自身らが考えている犯罪をやっているだろうと、自白を迫ってきます。(認めさせようとしてきます)

そのため、事故に遭った場合や、警察の呼び出しがあった時点で、弁護士に連絡していただけると今後の流れを含めてベストなアドバイスができます。

警察の取調べでは、録音することをお勧めします。

なお、公安委員会から通知が送られてきてからでも、不処分になったり、点数よりも低い行政処分(免許取消が免許停止になる等)がされる可能性もあります。

免許をあきらめる前に、まずは、当事務所までご連絡いただけすと幸いです。

福島原発事故の被災者支援活動について

当事務所所属弁護士らは、岡山原発被災者支援弁護団に加入しております。

現在、弁護団では、第1次提訴をし、夏頃、初回の口頭弁論期日が開かれる予定です。

また、弁護団では、訴訟の外にも、東京電力に対する原発ADRの申立ても行っております。

原発被災者の方々の苦労を金銭に評価し、東京電力に対して、請求しておりますが、ADRという紛争外手続の特性から、なかなか被災者の声が届いていない現状があります。

ADRで認められない範囲の損害については、訴訟において東京電力及び国に請求しております。

原発事故に関するの他の事件につきましても、岡山原発被災者支援弁護団においては、対応しておりますので、お気軽にご連絡ください。

みどり法律事務所
 弁護士 安 田 祐 介
〒700-0807
岡山市北区南方1-7-21
TEL:086-234-0008
FAX:086-234-0109
Mail:midori-yasuda@midori-law.jp
までお願いします。
(受付時間:平日9:00~17:30)

犬の飼い主の責任

今まで人を噛(か)んだことがない飼い犬が、人に噛みつき、大けがをさせてしまったらどうしますか。このような場合の飼い主の責任について考えてみましょう。

人に噛みつく危険がないとは判断されず
飼い主として「相当の注意」尽くすべき

「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない」という民法718条の規定があります。
すなわち、飼い主が飼い犬の管理について、その種類や性質に従い相当の注意を尽くしていない限り、責任を逃れることはできません。実際に、今まで一切人に噛みついたことがなかった犬であっても、犬である以上、人に噛みつく危険がないとは判断されず、飼い主が相当の注意を払う義務はなくなりません。
したがって、飼い主は、おとなしいと思って放し飼いにしていた室内犬であっても、来客者に対していきなり噛みつく危険を認識しておかなければなりません。また、鎖につながれた犬でも、訪問者に接触可能なつながれ方をしていたのであれば、やはり飼い主に責任が発生します。

犬に驚き、けがをした場合も責任は同じ
挑発など相手の過失が認められることも

また、鎖が古いなど、強度不足のために切れて噛みつかれた場合や、たとえ犬が噛みつかなくとも、来客が犬にいきなり吠(ほ)えられてびっくりして転倒し、けがをした場合なども、同様に飼い主はその責任を逃れられません。
もっとも、来客が飼い犬を挑発したり、不用意に手を出したりしたために噛まれた場合などは、来客にも過失が認められ、損害賠償額の減額、場合によっては免除になることもあります。

万が一に備え責任賠償の保険加入を

このように、犬の飼い主は、重大な責任を負わされる危険を認識し、万が一の場合に備えて、自動車などと同様に責任賠償保険に加入しておくことをお勧めします。

 

ネット社会の恐怖

レディア350号(平成25年4月25日発行)

Q:16歳になる子どもが掲示板でAの悪口を書いてしまった。すぐに消したらいいですよね?消さないとどうなるの?

 

A:Aが特定できる状態で,悪口を書くと名誉棄損となり,刑事罰や損害賠償責任を負うことがあります。Aの名前や住所,職業等が書かれていると個人を特定できますので,名誉棄損となる可能性が高まります。

名誉棄損は,ウェブ上に悪口を書き込んだ時点で成立するため,書き込みをすぐに消したとしても,関係ありません。また,すぐに消したとしても,一度ウェブ上に書き込まれた以上,書き込み内容がウェブ上に相当期間残ります(キャッシュ)。そのため,googleやYahooで検索するとヒットしてしまいます。

書き込みを消さない場合,ウェブ上に永続的に残りますし,第三者があなたの書き込みを2ch等に書き込むことにより,書き込みが拡散する可能性もあります。そうすると,もはや収拾がつかなくなり,書き込みが独り歩きしている状況になってしまいます。こうなってしまうと,拡散した書き込みの削除も難しいですし,Aと話し合いにより解決することも困難です。そのため,刑事罰を受ける可能性が高まります。

また,悪口と書きましたが,仮に真実を書き込んでも名誉棄損となることがあります。この点は,十分に注意してください。今,あなたが書き込もうとしている内容は大丈夫ですか?

浮気の代償

Q:家庭のあるKと浮気をしたため,Kの妻から150万円を請求されました。支払う必要はあるのでしょうか?また,Kに責任はないのでしょうか?

A:

浮気は,民法上の不法行為(709条)に当たります。そのため,あなたは,相手方の妻に対して損害賠償義務があります。

もっとも,浮気は,男女二人の行為ですので,その責任は二人にあります(共同不法行為)。そのため,あなた一人に150万円全額の支払い義務はありません。あなたとKの責任が等しいとすると,あなたとKがそれぞれ75万円の責任を負うことになります。この場合,あなたは,150万円全額を支払うとKに75万円の請求ができます(不真正連帯債務)。

つまり,Kの妻側に立つと,あなたから150万円の支払いを受けたが,Kもあなたに対して75万円を支払うことになります。そうすると,Kの妻の財産は,150万円増えるのではなく,75万円しか増加しません。

このように,離婚に至っていない夫婦が浮気を原因とする慰謝料請求をする場合,夫婦間(同一生計間)でのお金の動きがあるため,弁護士としても依頼を受けるか躊躇します。

なお,離婚に至った場合は,夫婦関係が切れているため,夫婦間でお金が動くということはありません。また,一般的に離婚後の慰謝料のほうが離婚前の慰謝料よりも高くなる傾向にあります。

詳細につきましては,弁護士にご相談ください。

子どもが火事を起こした場合の責任能力は?

子どもが火事を起こした場合の責任能力は?

子どもが火遊びをして火事を起こし、他人の家が燃えてしまったとき、親は損害を賠償しなければならないのか―。あまり考えたことはないかもしれませんが、火事による被害は非常に大きく、子どものしたことと安易に考えると重大な問題になりかねません。

原則、11歳未満の子に責任能力ないが
親は監督責任により賠償義務

子どもが他人に故意または過失によって危害を加えたとき、11歳未満の子どもには原則として法律上責任能力は認められず、11歳から14歳の子どもでも具体的な事情により、法律上責任能力が認められないこともあります。
子ども自身に法律上責任能力が認められない場合には、子どもに損害賠償義務は発生しません。もっとも、子どもに法律上責任能力が認められない場合には民法714条により、親に監督責任に基づく損害賠償義務が発生してしまいます。

重大な過失がないとの立証は困難
裁判所でも認める例ほとんどなし

ただし、過失により火事を起こした場合、民法と失火責任法という特別の法律により、親が子どもの監督について重大な過失がなかったことを主張・立証したときには賠償義務を免れると考えられています。
重大な過失がなかったことの証明は、一見すると簡単なことのように感じられますが、実際に裁判所が、親に重大な過失がなかったと判断した例はほとんどありません。なぜなら、子どもに常日頃から火遊びをしないように注意をしていたり、マッチやライターなどを子どもの手の届かないところへ厳重に管理したりしているような家庭は実際には少なく、また仮に注意や管理をしていても、そのことを証明することは非常に困難だからです。

親は道義的・法律的にも責任が発生

さらに、子どもに法律上損害賠償義務が認められる年齢であっても、親の監督責任が全く免除されるわけではなく、子どもとは別に損害賠償義務を負うこともあります。
このように子どものしたことについて、親には道義的な責任だけでなく、法律上の責任も発生してしまいます。火事に限らず、お子さんのことで何か問題が起こったときには安易に考えず、弁護士に相談していただければと思います。

 

山陽新聞レディア(H25,2,27)

その他の取り扱い事件につきましては、こちらをご覧ください。

第12回国選シンポジウム岡山大会を振り返って

第12回国選シンポジウム岡山大会を振り返って

賀 川 進 太 郎

 

国選シンポジウム実行委員に選任

昨年12月14日、岡山市の岡山コンベンションセンターにおいて、第12回国選シンポジウム岡山大会が開催された。岡山では、もちろん中国地方でも初の国選シンポジウムである。国選シンポは2年に1回ごとに各単位会で行われるので、まさに100年に一度の開催となるビックイベントである。

この国選シンポには、当初の目標を上回る430名の方が参加され、内容的にも充実しており「成功」の評価頂けるのではないかと思っている。

成功の評価を頂けるという受け身の表現から、私がこのシンポの傍聴人ではなく、開催側に属していたことがわかっていただけると思う。

国選シンポの準備は早くから行われる。私が国選シンポの実行委員に選任されたのは、平成23年10月であった。これまで、国選シンポに参加したのは平成22年の京都大会、もちろん傍聴しただけである。私は、平成23年4月より岡山弁護士会の刑事委員会委員長に就任し、同時に日弁連刑弁センターの委員にも就任したばかりであったが、まずはこの準備期間の長さに驚いた。しかも、委員会の雰囲気はもう準備時間が足りないという感じであり、一体どのような準備するのか興味津々であった。

岡山で開催されるといっても、委員は全国から選任されているので、月に一度の委員会は東京で開催された。まもなくして、委員会は4つの部会に分かれた。報酬部会、第3段階部会、第4段階部会、制度改革部会である。私は、第4段階部会の所属となった。

 

第4段階部会とは

第4段階部会とは、逮捕段階において全被疑者に対して、どのように国選弁護を付けるのか研究する部会である。

周知のとおり、現在の国選弁護段階は勾留段階の重大事件の被疑者までであり、これは第2段階である。これを勾留段階の全被疑者まで拡大するのが第3段階となる。

逮捕段階から、国選弁護人を付けるとすると当然刑訴法の改正が必要となり、予算も伴う。予算や立法の問題はひとまず置くとして、手続きとしてそもそもどのようなものが相当なのか?弁護士会として対応できるのか?最長72時間しかない逮捕段階で、交通不便な地域において対応できるのか?被疑者の資力要件はどのようにして確認するのか?などなど問題が山積みであった。

当番弁護型、被疑者国選前倒型、両者の折衷案などのモデル案が提出されたが、なかなか議論がまとまらなかった。そこで、海外視察により他の国の制度を参考にしようということになった。ドイツ、イギリスが視察の対象国となった。

 

イギリス調査

私は、イギリス調査団の一員となった。調査団のメンバーは以下のとおりである。

前田 裕司(国選シンポ実行委員会委員 東京 調査団長)

水谷  賢(国選シンポ実行委員会委員長 岡山)

賀川進太郎(国選シンポ実行委員会委員 岡山)

酒田 芳人(イギリス調査団 東京)

橋本 佳子(イギリス調査団 東京)

山本  衛(イギリス調査団 東京)

葛野 尋之(一橋大学大学院法学研究科教授)

仁木 敦子(通訳)

このイギリス調査は視察期間は5日間であった。ロンドンの弁護士会、法律事務所、裁判所、拘置所、大学などを訪問した。また、ロンドンだけでなく、ロンドンから電車で1時間から2時間ほどのブリストル、ブライトンも訪問し、イギリスの刑事訴訟手続きについて、生の現場を知ることが出来たことは貴重な体験であった。

資力要件不要

イギリス調査において、まず驚いたのが国選弁護(果たしてこの言葉が適切かどうか疑問も残るが)にもかかわらず、被疑者の資力要件が一切不問であることである。全被疑者は無料で弁護を受けられるのである。第4段階部会の議論のなかで、逮捕段階で、一体どうやって裁判官の関与なしに資力要件の確認を行うかについて様々な議論が沸騰していたことなど、どこかに飛んでしまった。仮にも公権力を用いて市民の自由を奪う以上、弁護士費用は国が支出するのが当然という考え方である。これは、ドイツの場合も同様であった。ヨーロッパ人権条約の影響である。

ただ、財政難や被疑者の人権に関心の低い日本にあって、資力要件を問わない国選弁護の実現はまさに夢のような話にも思えた。

電話接見

次に驚いたのが、弁護人と被疑者は24時間電話接見が可能であることである。実際、訪問先のサセックス(ブライトン市)の拘置所の被疑者の個室内には通話装置が設置されていた。

第4段階の議論のなかで、日本で逮捕段階から国選弁護が付くとしても、果たして短い逮捕段階で弁護士が接見に行くことが出来るのか。離島、僻地はどうするのか。この問題は、電話接見が面倒な手続きなしで可能になればほとんど解決されてしまうのである。

確かに、直に面談した方が信頼関係が生まれるし、被疑者の様子も良く分かるであろう。

それでも、捜査機関の取調べが開始される前にただちに被疑者に電話を入れて、「弁護士が行くまでは何も話さなくてよい。そういう権利がある」などと助言するだけでもかなりの効果は期待される。また、二回目以降の接見においても、ただ状況を確認するだけのような場合なら出向く必要はないことも実際には多く、弁護士人の負担も軽減出来るし、電話接見の場合の国選接見報酬を安くしたとしてもクレームはないものと思われる。

弁護士以外も接見可能

さらに、イギリスでは、弁護士は自ら接見しなくとも弁護士資格がない者を自己の代わりに接見させることが可能なのである。元警察官などが多く、一定の資格審査はあるようだが、想像もできなかった制度がある。

次に、国選弁護の質を担保する制度であるが、さすが市場原理の国である。被疑者が国選弁護人を事務所単位で指名可能なのである。訪問先のエドワーズ弁護士(ロンドン)は「国選弁護人の大部分は指名によって選ばれており、各事務所は指名を獲得しようと懸命に被疑者のために尽力する」と述べられた。また、サセックス(ブライトン市)の拘置所には弁護士依頼のPRポスターが貼っていた。キャンベル弁護士も、「リピーターが多いので、前回しっかり弁護すれば必ず指名来る。指名が来ずに順番を待っていたら、ほんの少ししか事件は回ってこない」などと冗談を交えて述べていたのが印象的であった。

ちなみに、拘置所、法律事務所、弁護士会、大学などすべての訪問先では常に紅茶やクッキーで丁重な歓待を受けたことも報告しておきたい。

次に、今回のイギリス調査の目的とは直接関係はないが、他の刑事弁護制度も紹介させていただくことにする。

証拠開示制度

いち早く被疑者と接見しても、捜査機関の手の内が分からなければ的確な助言はできない。イギリスでは、運用上、黙秘権行使と引き換えに事実上の証拠開示がなされている。証拠をみて弁護人は罪を認めるか判断できるのである。捜査段階での証拠開示などまず不可能だと考えられている日本との違いにまたもや驚く。

取調べの可視化と弁護人立会権

これらは、当然の制度となっていた。私は、可視化もさることながら弁護人立会権の重要性を認識出来た。すなわち、弁護人が代わりに応えることができない以外は、黙秘権行使を指示したり、被疑者と直ちに相談したり、調書を確認したりとその効果はかなりものかと考える。

このような被疑者を資する制度を次々に紹介していくと、捜査に支障はないのだろうかと疑問が湧いてくるが、ご存じのとおりイギリスはカメラが至るところに設置されているし、盗聴、司法取引も行われているなど日本とは異なる制度があることも押さえておかなければならない。

財政面

最後に、財政面についてであるが、日本と比べ充実した弁護制度であるが、結局のところ、費用は税金である。昨今の財政状態悪化を受けて、イギリス政府はコールセンター対象事件を拡大しようと考えている。コールセンターとは、交通違反などの極軽微な犯罪で逮捕された場合、国選弁護人は付かず、拘置所から24時間コールセンターに電話をすることにより弁護士のアドバイスを受けられる制度である(なんと、コールセンターは民間企業である)。このコールセンターの対象事件を拡大しようとしているのである。この動きについて西イングランド大学のケープ教授は、「不本意だが、いたしかたない面はある」と述べられた。国選弁護制度を財政的に支えているのは結局のところ税金であり、制度拡張に限界があることも押さえておくべきである。

しかし、日本の場合、国際水準より遥かに低いレベルの刑事弁護制度にもかかわらず、国選弁護の拡大の話を持ち出すと、政府関係者はすぐに財政の問題を出してくることにはやはり大いに疑問が残るところである。

裁判所

イギリスでは、重罪はクラウンコートで陪審制、軽罪はマジストレイトコート、中間犯罪がクラウンコートマジストレイトコートを選択できるという制度になっている。

マジストレイトは一般市民が裁判官として裁判を行う。この判決がユニークであった。国選弁護費用の負担はないが、検察官費用は負担させるのである。被害弁償も裁判所が額を決定してしまう。

思わず笑ってしまったのは、裁判官が被告人に現在の所持金と週給額を訪ねて、分割額を決定してきちんと払うように説明するのである。また、大部分の被告人は在宅で、公判に臨んでいたのも印象的であった。

クラウンコートでは詐欺事件、爆弾テロの予備事件等を傍聴した。裁判官のみならず弁護人も検察官もカツラに法服で、ときにジョークを交えて発言するのが習慣なのか、話には聞いていたが微笑ましく思えた。詐欺事件では被告人不在なかで審理をしていたのが印象的であった。

日本の弁護士会の頑張りをイギリスの弁護士へ

私は、個人的にエドワード弁護士に対して、当番弁護の費用について弁護士会が自費で行っていることについて伝えたところ、非常に驚かれるともに、敬意を表してくれたことが一つの救いであった。また、当会の弁護士会費の額を告げたところ、イギリスの5倍以上の金額だったことにも非常に驚かれていた。

このようにイギリス視察は日常業務では体験でなきないことばかりで大変有意義であった。また、視察期間中、刑事弁護の第一人者の前田先生や刑訴法学者の葛野先生らと話が出来たことも大きな収穫であった。

 

国選プレシンポ 平成24年11月9日

国選シンポに先立ち、岡山弁護士会でプレシンポを開催されることとなった。私はパネリストとして参加することになった。このプレシンポも本シンポと並行して準備をすることになったので準備が大変であった。このプレシンポは岡山弁護士会主催であり、当会独力で準備をしなければならないからだ。

韓国の刑事手続制度

何度か協議を重ねた結果、韓国の早期の身体解放制度を研究し、日本の制度と比較することになった。当会からも数名が参加している日弁連の調査団が韓国を訪問し、現地で情報収集を行った。その後、韓国より李東熹韓国警察大学校教授を招いて、当会プレシンポ実行委員との間で勉強会を開催した。

李先生は、日本に留学経験があり流暢な日本語を話し、日本の刑事訴訟制度にも精通しておられたので、日韓の刑事訴訟制度の比較を行うことが出来た。

韓国での勾留請求却下率は24%、保釈率は43%と高い数字である。この数字は、検察側が勾留請求を相当に絞って出しての数字なのでさらに驚きである。また、日本にはない起訴前保釈制度として拘束適否審査手続という制度があり、起訴前にお金を積むとか住宅を制限するとか一定の条件のもとで身体解放が行われている。被疑者段階であれば、勾留するかしないかの二者択一しかない日本に比べ、非常に柔軟な制度である。

次に特筆すべきは、韓国では勾留審査の場で、弁護士が付いて公開法廷において弁護した上で勾留するかどうか決めるという制度である。日本の場合、何度申し入れても勾留質問の場に弁護人の立会いが認められないのが現状である。

また、取調べの可視化、弁護人の立会いも当然に制度化されている。

気がつけば刑事訴訟手続後進国

私は、平成23年に、台湾の弁護士会の方々とも刑事弁護制度についての勉強会を行った。台湾も、取調べの可視化や弁護人の立会制度化がすでに実現している。このように気がつけば、可視化も弁護人立会権もない日本は世界でも少数派となってしまった。ましてや先進国のなかではもっとも遅れているのが日本の制度かもしれない。

韓国、台湾とも軍事独裁政権のもとで不当な身体拘束による人権侵害がなされたという時代背景があるにせよ、日本に追いつこうとしていたものが、今や相当に先を走っているように感じてならない。

私は、韓国や台湾で刑事訴訟手続改革をどのようにして成し遂げたのか非常に興味があったのだが、韓国・台湾ともに弁護士会の役割ももちろんあったようだが、主には政治主導によりこの改革が達成したとのことであった。人権侵害の歴史的背景から国民世論が後押しした結果であった。日本の場合、戦前の治安維持法による不当な身体拘束の反省から新刑事訴訟手続き制度が設定されたのだが、その後、形骸化というべきか制度疲労を起こしているように感じる。ある意味、今の日本は平和ともいえるのであるが、不当な身体拘束に対する国民世論の盛り上がりは少なく、国民の票が期待出来ない刑事訴訟改革が果たして政治主導でなしうるのか考えると悲観的にならざるを得ない。

もっとも、このような状態で捜査機関の捜査はどのように行っているのかという疑問に対しては、韓国では国が保安上の必要から国民全員全指の指紋を把握していることや盗聴なども行われているとのことであった。この点は、イギリスと同様捜査機関の対抗手段にも配慮していた。

プレシンポ当日(平成24年11月9日)

当日は、岡山弁護士会の大会議室がほぼ満杯となる約130名の方々の参加を得た。弁護士のみならず一般市民の参加も数十名あった。また、ほとんどの方が途中で席を立つことなく、参加人数は開会してからも増えていった。

内容的にも参加人数からいっても大成功だったと思う。

プレシンポのあとの懇親会の席で、李先生とイギリスの電話接見の話になった際、李先生はその場から韓国の警察署の署長に電話をされて、「韓国でも今は電話接見可能になっています」と教えていただいた。近年、日韓関係が揺れているが、学ぶべきところは学ぶべきだと思う次第である。

 

 

国選シンポ当日(平成24年12月14日)

私は、当会の岩﨑会員ともに総合司会をすることになった。リハーサルを行ったり、皆さまの協力の元、なんとかこなすことが出来た。

その他、岡山駅から会場までの道案内のため、当会刑事委員会のメンバーに協力を仰ぎ、寒い中、各所で案内板を持っていただいた。(この場を借りて、感謝したいと思う。)

当日、一番気になったのは、なんといっても参加者の人数である。衆議院が突然解散になりこのシンポの2日後が投票日であることや、このシンポ開催の少し前に当会の弁護士の不祥事が明るみになったことで、参加人数への影響が懸念された。

しかし、当日は天候にも恵まれ、会場は満杯状態となり、後方の参加者の机を撤去して椅子を入れなければならない状態になってしまった。この点は、当日配布資料が相当に大部であり、シンポ中に資料を閲覧するのに相当支障があったのではないかと後日の実行委員会でも反省点としてあげられた。

内容的にも、参加人数的にも大成功だったと自負する。ただ、惜しむらくは、一番聴いてほしかった政治家の方々が、衆議院選挙投票2日前ということで参加予定者全員がキャンセルされたことや、平日開催ということもあって裁判所や検察庁の方々の参加もほとんどなかったことである。

以下国選シンポ当日の内容をまとめた。イギリス調査のみならず、ドイツ調査、韓国調査、弁護報酬、第3段階実現体制など私が直接関わっていない分野についても素晴らしい内容であった。

第三段階実現について

弁護士数の増加のみならず各単位会や会員の努力によって、第三段階がいつ始まっても対応可能な状態であること、被疑者弁護援助制度の活用による成果として、岡山広島の弁護士の弁護活動が紹介された。

つづいて、国選報酬については、国選弁護報酬に関するアンケート結果の分析から国選報酬体制の問題点が指摘されるとともに、今後のあるべき姿が示された。実例として、国選弁護人が何十万円もの私費を投じて私的鑑定を依頼せざるをえなかった岡山の活動例や、不起訴や認定落ちを獲得しても国選報酬額にまったく反映されない広島の例が紹介された。

 

制度改革について

「被疑者段階における身体拘束からの早期解放を目指して」と題してパネルディスカッションが行われた。韓国における「拘束適否審査制度」の視察結果から、人質司法打破を目指すための制度改革について議論が行われ、起訴前の証拠開示、起訴前保釈制度、勾留再審査手続を導入が提案された。

 

 第4段階について

そして、私も調査に参加したイギリスの制度を踏まえた第四段階についてのパネルディスカッションである。

前述のように、当番弁護士型、被疑者国選前倒型、両者の「折衷型」の3案を検討してきたが、これらの案を統一するために、イギリス、ドイツの弁護制度視察が実施された。ドイツでは、被疑者の意思にかかわらず国選弁護人を選任する制度を導入することによって逮捕段階の弁護活動が行われている。パネルディスカッションでは、イギリス型ドイツ型をそれぞれ前提とする二つの「私案」をもとに、具体的制度について議論が実施された。しかし、統一的結論までにはいたらなかた。

 

私としての第四段階

イギリスドイツともに、資力要件を問わないこと、国選弁護人は指名出来るという点は共通である。しかし、ドイツでは、そもそも供述証拠は証拠能力を認めないという運用がなされているので、弁護人がただちに接見する必要がないという点で、イギリスや日本とは大きく異なっている。被疑者は国選弁護人を何日もかけて選ぶのが通常というドイツの制度は、まさに供述証拠の証拠能力を認めないという運用のなせる技であり、日本で果たしてこのような制度が導入できるものなのかと考えてしまう。私としては、イギリス型を基本にして電話接見を認めるように目指すのが一番現在の制度の改良型と言えるのではないかと考えている。とはいっても、資力要件撤廃(資力要件を付けると弁護士人がただちに選任されない。)、電話接見の実現、コールセンターの設置など、果たして実現しうるのか財政面の了解は取れるのかと考えるとき、世論の後押しや強力な政治力が不可欠ではないかと考えてしまう。

 

 最後に

しかし、我々の先輩方は当番弁護士制度を20年以上前に制度化し、数年前には被疑者国選弁護制度を実現したのである。このときどれほどの世論の後押しがあったのか、政治力があったのか。実現に向けて弁護士会や我々弁護士の力を信じたい。

交通事故に遭われた方へ

賀川法律事務所は、弁護士特約に対応しておりますので、相談・事件の依頼を含めて弁護士費用が無料(300万円まで)となります。

安心してご相談ください。ただし、ご相談者様が損保会社に加入し、かつ弁護士特約にご加入されていることが条件となります。

なお、ご相談者様の保険内容が不明な場合、こちらから損保会社に契約内容を問い合わせることもできます。

交通事故の当事者同士の話合いでご相談者様に不利な内容の合意をしてしまうおそれもあります。

下手に当事者同士での話合いをなされる前に、弁護士にご相談ください。

 

その他の取り扱い事件につきましては、こちらをご覧ください。

複数弁護士のメリット

賀川法律事務所では、原則として複数の弁護士による共同受任(法テラス、国選弁護等を除きます。)を行います。

共同受任のメリットとしては・・・
複雑事件における弁護士相互のカンファレンスにより妥当な解決が図れます。個人受任とことなり、一つの事件を複数の弁護士により多角的に分析し、総力を挙げて取り組みます。
緊急性の高い相談(たとば、事故に遭った、身内が逮捕された、債権者が取り立てに来た、など)についても、随時対応可能です。
通常事件におきましても、弁護士相互によるカンファレンスよる早期・妥当な解決を目指します。
個人受任に比べて、早期の対応や妥当な解決が期待できます。

 

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