医療事故情報センター総会記念シンポジウムに参加して

 

医療事故情報センター総会記念シンポジウム

「医療事故調、いよいよ法制化へ ~中立・公正な調査のための制度設計とは~」

に参加して

賀 川 進 太 郎

(岡山弁護士会)

私は、医療事故情報センターの正会員弁護士である。

平成25年5月18日、名古屋に赴き、ウインクあいちで開かれた医療事故調査機関の設立に関するシンポジウムに参加した。

医療事故調査機関の設立については、その必要性の議論がなされて相当に久しい。

しかし、未だ実現には至っていない。

我々医療過誤事件に従事する弁護士としては、医療過誤事件の専門性、秘匿性の壁を打破するためにも、このような調査機関の設立は従前からの悲願であった。

今回のシンポジウムにおいては、まず、医療事故情報センターの松山健弁護士の基調講演により、医療事故調査制度の経緯、目的などの説明が行われた。

その後、パネルディスカッションが行われた。

以下は、パネリストの意見とそれに対する私の所感である。

厚生労働省の提唱のモデル事業として、日本医療安全調査機構がある。

この事業については、ここ5年間で199件の調査実績がある。

松本博志医師は、このモデル事業は既に相当の実績があり、この事業を拡大する制度設計が良いとの意見である。

このモデル事業は、死亡事案に限定されているが、解剖を行って死亡原因の究明や再発防止のための評価を行っている。

調査費用として、1件あたり約100万円を要している。

私も、このモデル事業を拡大するのが一番現実的ではないかと考える。

また、医療事故情報センターの加藤良夫弁護士は、医療事故の抽出力を高めるため、医療事故調査の対象になる事件の基準を客観化する重要性について主張した。

私も、調査の入り口で恣意的な運用を避けるために重要な視点であると考える。

一方、日本医師会の寺岡暉医師は、院内調査機関に外部委員を入れることで公正を担保できるとして、院内調査機関の充実を主張する。

医師会の立場からのシンポジウム参加であり、第三者機関による事故調査機関よりも、院内調査機関の充実を図るべきという立場である。

私としては、たとえ外部委員を入れたとしても、院内という身内の調査である限り信用性の担保に問題があると考えざるを得ない。

最後に、消費者問題に詳しい中村雅人弁護士は、既に成立されている消費者事故調がさほど機能していない実情を指摘した。

私も、たとえ医療事故調査機関が設立されたとしても、中身が伴っていないものであれば現実には奏功しない危険性には十分留意するべきと考える。

これは、今後の立法に向けて重要な視点でもある。

以上のように、医療事故調査機関の設置とひとことでいっても、様々な問題があることが理解出来た。

いずれにしても、医療過誤事件を担当し、依頼者の苦悩を眼前に受ける弁護士としては、一刻も早い医療事故調査機関の設置が望まれる。

 以上